休みの日に何するかっていったら、「いや、むしろレズビアンが主人公の話しか見たくないね。」
という方のために、わたしが名画座の支配人になったつもりで3本立てを企画しました。
入場料はネットフリックスの月額料金990円。支配人が大いそぎで書いてるこのパンフレットは無料です。
Netflixはとても合理的。必要なときに登録し、要らないときはキャンセルし、また必要になれば再開ボタンを押すだけ。
キャンセル方法は:
顔のアイコン → アカウント → メンバーシップのキャンセル(ボタン押す)
簡単にやめられて気持ちよく退会させてくれるサービスがいいです。
マスター・オブ・ゼロ 「サンクスギビング」シーズン2 エピソード8
人気ドラマの1話で、他のエピソードを見なくても話はわかるようになっています。エピソードの主役は、デニースというブッチなアフリカ系アメリカ人ゲイ女性。
デニースの子ども時代から最近までの、デニースの実家でのサンクスギビング(感謝祭)の様子が描かれています。
サンクスギビング(感謝祭)の起源はぞぉぉっとしてしまう内容です。が、
現代の多くのアメリカ合衆国の人々にとっては、とりあえず年にいちど家族が集まって、七面鳥やらパンプキン・パイやらご馳走を用意して、感謝のお祈りをして食べる、という年に一度のイベント。そういうときって、
子どもが大きくなって彼女を実家に連れて来たりしますよね。すると
緊張が走ったりするのですね・・。
デニース役を演じ脚本も書いたリナ・ウェイスは、このエピソードでエミー賞を取っています。
お母さんにカミングアウトの場面。
ある年のデニースのガールフレンド子ちゃん。デニースの幼なじみデフを蹴っ飛ばしてソファから追い出し(あし伸ばしたほうがラク!)
毛布を所望し、
チョコレートミルクを所望し、
そういう人にわたしはなりたい宮沢賢治*。
わたしはこの番組が好きで、他のエピソードもぜんぶみました。おすすめです。
*啄木ではなく。
シークレット・ラブ
- シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト公式サイト
- シークレット・ラブ:65年後のカミングアウト(「とにかくやたらと泣けるので戸惑ってしまった。」から始まる記事)
70年くらい連れ添った白人レズビアンカップル、テリとパットのドキュメンタリー。
映画の撮影中、引っ越しのために荷物を片付けていたら地下室から古いトランクが出てきて、
若かった二人が1940年代~1950年代に撮りためた写真と8ミリフィルムがどっさり。それらを映画のなかで見られます。
お互いのことを人に話すときは「いとこ」と言っているふたり。
この日はテリの主治医と電話で。
テリ(写真の右側)は何年か前に、姪っ子にカムアウトしました。
姪っ子さんは、小さい頃から「テリおばさん」と「パットおばさん」はセットだと思っていたけど、恋人同士だとはぜんぜん思ってなかったそう。
(えっなんで気づかないの!?とわたしは思いますが、そこはまあ突っ込まないとして)
姪っ子に私達ゲイでカップルなの、と言ったら「そうだったんだ~。テリおばさん大好きだよお~」ということで、ニコニコです。(この映画の監督はテリの姪っ子の子ども)
パット(右)とテリ(左)は、1947年にアイスホッケー場で出会ったそうです。
とにかく昔の写真と映像がすごくいい!
結婚式で。
昔の写真や映像を見ながら思い出話を聞くのは実に楽しいです。
テリは映画『プリティ・リーグ』の題材になった全米女子プロ野球リーグで活躍した元キャッチャーで、そういう話もおもしろい!
姪っ子たち「 なんでカナダからアメリカ合衆国に野球をやりに行ったの?」
テリ 「 自由になりたかったから」
ここから少し背景情報です。カナダで同性愛(同性に惹かれる状態、同性と踊る、キス、手が触れること含む)が条件付きで非犯罪化されたのは1969年。条件てどんな?かというと、2人とも21歳以上で、誰も見ていないところならば。ということは、
家の外で手をつなぐと犯罪。3人以上の人が一緒にいる場合(例えばそのうち2人が同性同士で踊っていたら)犯罪です。ひどい。バカにしてますな。
ところで古いトランクからは、付き合い始めた頃にふたりがお互いに宛てたラブレターもごっそり出てきました。
姪っ子たち「きゃーロマンチック!でも・・なんであれもこれも手紙の下の端っこがやぶってあるの?」
テリ 「 ひとに見られたときに、誰が書いた手紙なのかがわからないように。知られると危険だから」
ハーフ・オブ・イット面白いのはこれから
好きな女の子がいて、廊下で見かけたりすると、
ぽおっ・・と。してますエリー。
少し前の記事「Amazonプライム編:むしろレズビアンが主人公の映画しか観たくない方へ」でご紹介した、アリス・ウー監督の最新作ですよ。
前作の『素顔のわたしを見つめて Saving Face』と同じく、中国系の移民家族に育ったひとりっ子エリーが主人公。
でも『ハーフ・オブ・イット』の舞台は、白人ばかりの田舎の町。『素顔のわたしを見つめて』の舞台ニューヨークとは違い、中国系のコミュニティは、ないのです。
主人公エリーは、やーいアジア人!中国人!と揶揄されながら、たったひとりで自転車をこいで高校に通っています。で、
ふとした出来事からひとり友だちができて、好きな女の子と話すきっかけができて、家族を支えるためにずっとここにいる運命だとあきらめていたけどそうじゃない。という話。
町を出て遠くの大学に行くエリーは、ほんとは自分に「泣くなよ!」って言ってるのです。
泣かないようにがんばってる友ポール。いいやつなのです。(役者がうまい!)
ふと監督はひとりっ子なのかな?と思い、調べてみたら*そうでした。
台湾から米国に移民した両親のひとりっ子で、成績優秀で自分でなんでもできる子で、
働きながら大学を卒業してマイクロソフトに就職し、とんでもなく高給取りのエンジニアをしながら(5年間収入ゼロでも映画に注力できるだけの)お金を貯めて、
きっかり5年でデビュー作「素顔のわたしを見つめて Saving Face」を書いて撮ってソニーに売ってリリースし、そこで得たお金を賢く投資して、
そしたらお母さんが病気になったので映画からは離れて看病に注力し、
何年かしてお母さんの病気がよくなったので映画に戻り、2作目「ハーフ・オブ・イット」を撮ったしだい。
(いつも思うんだけどすごい人ってとことんすごいな。ふぅ。)
本日のスペシャル
1日1新:新しいテイクアウトお寿司やさん
1日1冊:Min Jin Lee「Pachinko」、若山曜子「作っておける前菜、ほうっておけるメイン」つづき
『ハーフ・オブ・イット』ねたばれOKな方だけどうぞ。
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ばびゅんと走り去る主人公。かわゆい。