妹は子どもの頃、才能あるコメディアンでした。
母の運転するクルマの後部座席は1対1のぜいたくなステージで、自分の役しかできない大根役者なわたしはもっぱら聴衆役。
妹のはあまり大きな声を出さない芸風で、観ているわたしだけが恐怖に叫び、笑いすぎの呼吸困難から吐きそうになったことも。(そして「うるさい!」と怒られる)
ネタとしては、たいてい猫の怨念
「とな~~りのいえ〜〜に
ねこがぁ~~おんねん。」
レベルで、出どころは児童向け雑学の本だったり志村けんだったりするのですが、とにかく演出がいい。
声色から表情、おかしな動きに持って生まれたものがあります。セリフなしの一発芸も輝いていました。
小学4年生のわたしと2年生の妹が、何かに立てかけておけばお座りできるようになったくらいの赤ちゃんだったイトコを観察していたときのこと。
その頃のイトコの定位置は、ソファの三角コーナーでした。どっちにコテっと倒れても大丈夫なようにです。
妹は赤ちゃんのほうに向いて、着ていたTシャツを脱ぎはじめました。首のつまったTシャツを脱ぐときどうなるか。
というと、
いったん頭が隠れ、つぎに髪の毛のない妹の真っ白な顔だけが、ぺろりとあらわれます。
そのまま首を左右に揺らし両目をみひらいて何か言いながら赤ちゃんに近づく。
赤ちゃんは一瞬よくわからない叫び声をあげてコテっと。(←イトコはすぐに復活し、現在は三児の父)
赤ちゃん怖かったのですね。わたしは気絶赤ちゃんが怖かった。
この1件で周囲をおおいに沸かせた妹でしたが、小学校の高学年になって、芸人としてのキャリアからさっさと引退してしまいました。
もったいないと思うわたしは、
「ねえねえ、わたし達いまは仕事があるから、年をとったらお笑いデビューしない?」
と持ちかけてみましたが
「断る」
とサムライのような答えが。
そうそう、わたしの野望でした。
妹が96歳くらい、わたしが98歳くらいになったら、まず妹がボケてくるような気がします。(長女だった祖母も妹達より長生きでしたし)
その隙を突いてわたしが妹をプロデュースし、コメディアンとして売り出す。
これですな。
写真は何年か前の由比ヶ浜。夏休みがはじまる少し前、放課後の夕暮れどきにじゃぶじゃぶいってる人達です。
本日のスペシャルは、今日1つめの記事にあります。