Amazonプライムで観られる作品をご紹介します。299円~500円でレンタルしました。無料じゃないの?とお思いでしょうか。はい。
お金の事情と使い方は人それぞれです。わたしの場合は「無料じゃない」ことを理由に観たい映画を観ない、というのも本末転倒な気がするので、ときどき有料作品も観ます。
この記事では、「いや、むしろレズビアンが主人公の映画しか観たくないから。」という方のために、わたしが名画座の支配人になったつもりで厳選作品をご紹介します。
3本立てなら税込み1,098円。支配人がお正月の朝から書いてるこのパンフレットは無料です。
寒い場所にいる方はお部屋を暖かく、暑い場所にいる方はお部屋を快く、お好きなようにお楽しみください。
支配人より
選定条件は、わたしが、いいな・好きだな・おもしろいなと思ったこと。
今回の3つの作品においては:
- ハッピーエンドだ
- 主人公は自死しない殺されない、矯正施設や精神病院に入れられない、レイプされない
- シスストレート男性の妄想にアピールするためのヘンテコな”レズセックスシーン”なし
インタビュー記事によると、『素顔の私を見つめて・・・』の監督はゲイ女性、『ラフィキ』の監督はストレート女性、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の監督は女性と男性のパートナー同士です。
(その人のアイデンティティはご本人が決めることですし、わたし達のあずかり知ったことではありませんがご参考までに)
素顔の私を見つめて・・・
『素顔の私を見つめて・・・ (字幕版)』は、Prime Videoでレンタル299円。
勝手に解説
原題は『Saving Face』=メンツを保つこと。
主人公ウィルは優秀な外科医。ニューヨークの中国系コミュニティで、母親(父親は早くになくなった様子)と祖父母にだいじに育てられた、いろいろ背負い系ひとりっ子です。
自分がゲイであることは、とりあえず家族には言ってないけれど、ガールフレンドとくっついていたところを母親に目撃されたことがある。(のでお母さんは知っている。けど知らないふりしている)
バレリーナの彼女ができたり、家出したお母さんが転がり込んできたり、彼女に怒られたりゆるしてもらったり、フィールグッドなコメディです。
(↑お母さんが来てからどんどん花柄になっていくウィルのアパート。この映画は登場人物たちの家のインテリアも見どころ)
印象的なのはウィルと母親の関係。お母さんは中国系アメリカ人の母親の典型っぽく描かれているところもあるんだけど、それと同時に、
早くに子どもを持ったお母さんは、子どもを育てながら自分も(文字どおり)大人になったのかもしれない。同志みたいな結びつきがちょっとした拍子に描かれているんです。
↑母親役のジョアン・チェンがうつくしすぎ。他の役者は輝くべき場面になるまでは輝かないでいられるんですが、この人だけは常時キラキラがやまないので、スターってばね・・と支配人しみじみ。
わたしが大好きな監督 Alice Wu(アリス・ウー)の長編デビュー作品です。最新作『ハーフ・オブ・イット面白いのはこれから』はNetflixで見られます。
バトル・オブ・ザ・セクシーズ
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ (字幕版)』は、Prime Videoでレンタル299円。
勝手に解説
セクシーな女のひとが絡みあって戦う映画ではありません。テニスの男女対抗試合のことをいっています。
主人公は実在のすごいテニス選手ビリー・ジーン・キング(←レズビアン)、舞台は1972年のアメリカ合衆国。キングが女性スポーツ選手として世界で初めてシーズン獲得賞金10万ドルを達成した翌年のこと。今から50年前ですね。
映画はこんなふうに始まります。
全米テニス協会の女子選手に対する待遇がひどすぎる。試合のチケット売上は同じ金額なのに、女子の賞金は男子の1/8=12.5%。
ランキング上位の女性選手たち9人が、自分たちで女性のツアー大会を開催することに。スポンサーいないしお金がないから名目上の契約金は1ドルです。
↑ 1ドル札を掲げる9人の選手たち [Image source: CELEBRATING 50 YEARS WITH THE ORIGINAL 9]
独自のツアー(現在のWTAファイナルズ)は大人気でスポンサーも付き、他の選手も参加するように。
そんな流れをいまいましく思った(というよりも実はギャンブル依存でいろいろ困っていたので、お金になるかも!と思った)元チャンピオンの憎めないおじさんが、キングにテニスの「男女対抗試合」を挑み、世界中でテレビ中継された出来事と、
キングがツアー中に出会った美容師の女の人とのロマンスを描いた映画です。
映画の内容が事実に即しているのかをプロが調べた記事によると、若干順番が変わっている以外はほぼ事実と同じだそうです(ハリウッド映画だけど)。
- 1970年代のビリー・ジーン・キングのインタビュー(この人すごい話が上手)
- 2018年のビリージーンキングのインタビュー(ぶれない)
なんで政治家にならなかったんだろう・・。(ゲイだから、とか、キングの時代の女性選手は勝っても賞金額が低く、生活のために長い選手生活を余儀なくされたとか、いろいろ理由はあると思うけどそれでも不思議。現在は活動家)
ラフィキ
『ラフィキ : ふたりの夢(字幕版)』は、Prime Videoでレンタル500円。
勝手に解説
支配人はとにかく映像の色とデザインに心を奪われました。(とわたしが興奮しているっていうことは、このブログの写真を楽しんでくださる方にも合うかも)
ケニアのナイロビの小さな路地や建物のショット、草花、室内のようす、登場人物が身につけているもの、風に揺れるファブリック、とにかくきれいなのでじぃっと見入ってしまう。
監督とシネマトグラファーが見た目きっちり主義なのかな。観るひとをほんのり緊張させる冷たみがあります。
タイトルロールのスタッフの名前紹介は、イラストが洗練ポップなので何度もみてしまった。。。ポップって距離感を保ってくれるところが安心する。
はい、そんなことよりあらすじです。
ナイロビの高校を卒業したばかりのケナとズィキが「次に何しよう、どうなろう」と将来の夢なんかを語りながら一緒に過ごすうち、どんどん心が近づいてちゃんとしたデートしようよ、な恋人同士になるロマンス。ただし、
ふたりの住むケニアには反同性愛規定があり、”自然の摂理に反した(って何?いつも思うんだけど)考えを持つ者”は刑罰の対象です。
『ラフィキ』はケニア国内では上映禁止になっています。ケニアの映倫から「結末が希望にあふれポジティブすぎるので、変更するように」といわれても監督が応じなかったため。
レズビアンが主人公な映画をハッピーエンドにしたせいで上映禁止になった映画。ふむ。皆さま観ましょう。
ラフィキ(rafiki)は辞書によるとスワヒリ語で友だちという意味ですが、もう少し細かいニュアンスがあって、自分と誰かの関係を指して、どういう関係かをはっきり言いたくないときに使う言葉なのだそうです。なるほど。それはラフィキですね。
- ワヌリ・カヒウ監督TEDトーク(日本語字幕付き)「楽しく、力強くて突飛なアフリカン・アート」
ごゆっくりお楽しみください。
本日のスペシャル
1日1新:お寿司やさんでテイクアウトをして、安いなあと思ったら、出前用の桶ごとの値段でした。桶を捨てる手間賃入りです。(←閉店するから)
最近の1日1冊:吉野靫「誰かの理想を生きられはしない」、高橋治「おくのほそ道」、畠中恵「やなりいなり」、Priya Parker「The Art of Gathering」それぞれ続き。